くらしをつくる人NOTE

Vol.13
2021.2.18
日の出ガラス工芸社 津坂陽介さん、久保裕子さん<前編>

見立てるということ

金子「津坂さんにとって、新しい作品を生み出す原動力とは何なのでしょうか?」

津坂さん「答えになっているかわからないのですが、僕は作るときに "見立て" というのをやっているのではないかなと思っています」

金子「見立てですか」

津坂さん「レースガラスの模様を着物の柄に見立てて作るとか、鳥の羽毛に見立てて作るとか。
そういう風にやっているんじゃないかなって。

鳥を作ろうかなって今までは思わなかったんですよ。
ベネチアングラスの本場では生き物というとドラゴンとかドルフィンとかを作るんですけど
僕もそういうものしか頭になかったんです。

でも富山に住んで沢山の鳥たちが周りに来るようになって、それと自分のレースガラスの技術をくっつけることで可愛い福鳥が誕生したんです。

さっきのお茶碗の柄は着物の柄とかチェック柄を意識して制作を始めました。
透明なレースは夏の夕方の空気感を表現しています。

自分が見たり、感じたりしたことと技術を組み合わせて作品を生み出す楽しさが今はありますね」

津坂さんの道具

漫画雑誌を熱々のガラスの種を整えるための道具として使用している津坂さん。

富山ガラス造形研究所は吹きガラス以外にも、鋳造やステンドグラスを学ぶことができたのですが、津坂さんが選んだのは吹きガラスでした。

その理由を尋ねると、吹きガラスの工程が高校の時に夢中で作っていたプラモデルとかエアガンを組み立てる作業と同じような感覚があったそうなんです。

この漫画を見て、少年時代の純粋な気持ちを今も持ち続けながらガラス作品を制作されているのかなあなんて想像してしまいました。

津坂さんの手

津坂さんのお人柄が感じられる優しい手。

津坂さんご本人もとっても穏やかで優しい方なのですが
久保さんの津坂さんの第一印象はなんと「怖い人」。

当時は、目が鋭くてとっつきにくい感じだったらしいのです。

津坂さんにその時のことを伺うと

津坂さん「僕は高卒で入学したんですが、周りは美大出の方がほとんどだったんです。
美術的な基礎が無いからすぐに落ちこぼれちゃうんですよ。
でも吹きガラスはスタートラインが一緒だった。
皆についていくには吹きガラスの技術しかないって思って負けないように頑張っていたら、どうも怖く感じたみたいです」

とのことでした。

コップ一つをとっても同級生の中で群を抜いてクオリティの高い作品を作っていたという津坂さん。

必死に努力することで手にした確かなガラス技術と津坂さんの優しさがあるからこそ
かっこいいけど、拠り所がある美しい作品が生み出されているのでしょう。

小林健二(品品)× 津坂陽介 + 久保裕子(日の出ガラス工芸社) × 雨晴

「春をさがそう」

こんな時だからこそ春をさがそう
こんな時だからこそ春を育てよう
こんな時だからこそ春を愉しもう

小林健二さんの景色盆栽と津坂陽介さん、久保裕子さんのガラス作品と共に
おだやかな気持ちで過ごす春の時間をご提案いたします。

会期:2月26日(金)-3月8日(月)
※会期中も白金台雨晴は木、金、土、日のみ営業です。

◇作家在廊について

この状況を受けまして作家の皆様の在廊は控えさせて頂きます。

◇オンライン販売について

2月26日(金)より品品の景色盆栽の一部はOnline shop 雨晴食堂
にてお求め頂くことができます。

日の出ガラス工芸社の作品は会期中、もしくは会期終了後にオンラインショップに掲載いたします。

◇久保裕子さんの池文鎮、石文鎮、水の箸置きにつきまして

大変人気がある作品となりますので文鎮はお一人様、2点まで、
水の箸置きはお一人様5点までとさせて頂きます旨ご了承くださいませ。

日の出ガラス工芸社

津坂 陽介

1977年
愛知県岡崎市生まれ
1988年
富山ガラス造形研究所 造形科 卒業
2000年
富山ガラス造形研究所 研究科 修了
チフーリスタジオ アシスタント(シアトル/USA)
2007年
富山ガラス造形研究所 助手
2010年
個人工房「日の出ガラス工芸社」設立。
溶解炉を築炉(富山)
富山ガラス造形研究所 非常勤講師
2011年
磐田新造形創造館 ワークショップ講師(静岡)
名古屋芸術大学 美術学部 非常勤講師
2008年〜
全国のギャラリーにて展覧会、教育機関にてデモンストレーション。

久保 裕子

1996年
武蔵野美術大学 基礎デザイン科 卒業
1998年
富山ガラス造形研究所 造形科 卒業
1999年
ピルチャックGlass Schoolに参加(シアトル/USA)
2000年
富山ガラス造形研究所 研究科
富山ガラス造形研究所 助手
2003年
なないろKAN硝子工房 スタッフ(富山)
2008年
アーティスト・イン・レジデンス(倉敷芸術科学大学)
2010年
個人工房「日の出ガラス工芸社」設立(富山)

Photo / Yuka Yanazume

Interview / Kenichi Kaneko (AMAHARE)

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