くらしをつくる人NOTE

Vol.8
2017.6.28
ガラス作家 おおやぶみよさん

光と夕刊とガラス

ギャラリーの名前を日月とつけられたように、太陽や月が放つ光とガラスの関係にこだわりを持つみよさん。
ガラスのお話をする時も必ずと言っていいほど、光のことが話題に出てきます。

金子「みよさんが思う、ガラスと光の関係性を教えてください」

おおやぶさん「沖縄の夕刊ってね、なくなったんですけど(笑)」

金子「夕刊なくなっちゃったんですか?(笑)」

おおやぶさん「そうなんです。何で夕刊の話を出したかというと、日月で制作していた時は、朝は工房で仕事をして、昼から夕方まではギャラリーのお店番もしていたんですね。

朝、自分が作りながら見るガラス。
日中の強い沖縄の日差しの下で見るガラス。
そして夕暮れ時に夕刊を読みながら、ぼーっと眺めるガラス。

それぞれ表情が違うことに気がついたんですよ。

強い光、やわらかい光。
自然の光、人工的な光。

光によって見え方が違うガラスって面白い素材だなあって。

一日の終わりに日月で夕刊を読んでいた時間が、それに気づかせてくれたんです(笑)」

自然と共に生み出すガラス

新居の隣にある新工房は、とってもシンプルでモダンな空間。
そこにはガラスを作るための設備が整然と並んでいます。

たまたまいま沖縄にいるとおっしゃるみよさんに、「あえて沖縄でガラスを作っていて良かったことは?」と伺ってみました。

おおやぶさん「やっぱりこの立地条件ですね。ガラスを作るだけでなく子供の学校のことなどを考えても住みやすい。自然が広がっているけれど、買い物にも便利だったり。適度な田舎というのは、なかなか他では見当たらないですよね」

金子「こちらの環境も素晴らしいですよね」

おおやぶさん「ずっと機械や火を見ながら仕事をしているとやはり疲れてくるんですよね。
ふと横を見ると圧倒的な緑が広がっていて、心が落ち着くんです。
一年中緑のある沖縄でのくらしは贅沢だなと思います」

くらしと共に変わるもの

工房を造られてから14年。
みよさんの作品も少しずつ変化されています。

それはご自身のライフスタイルや嗜好によるところが大きいようです。

金子「みよさんの作品は、日々変化されているように感じます」

おおやぶさん「うつわは毎日自分も使うし、子供も使う。
子供が小さい頃は水滴が付いても滑らない、片手で持ってもこぼさないとか、そういうことを考えていました。
いまは子供も成長して、自分のライフスタイルや嗜好も変わる中で作品も変化しているのだと思います。定番のスピカのグラスは、最初に作っていたものより口元が薄くなったとお客様に言われることがあるんですけど、いまは少し薄いものが好みだからそうなっているんです。でもまた、厚いのが良いなと思ったら変えていくと思います」

おおやぶさん「新しい家ができて使いたいものがまた増えてきたんです。子供も食べられるものが多くなり、使ううつわも変わってきた。

自分の仕事は新しい技法を使っているわけでもないし、伝統工芸の領域でもない。自分が変わっていくことでうつわも移行していく。
それで良いと思っています。

いろいろな所を転々としてきて、そのどれかが欠けていてもいまの作品はできていない。ガラスとはなんぞやとかそういうことはあまり考えずに、何にもとらわれずに楽しく作っている。

作品を見て、おおやぶみよのうつわだなって思ってもらえて、気に入っていただけたら嬉しいなと思います。

4/5
みよさんの道具