くらしをつくる人NOTE
2022.9.29
こちらは晋吾さんが作陶に集中するために作った秘密の小部屋の入り口です。
よく見るとアトリエの表札には「空頭」と書いてあります。
「からづ」って読むのだそうなのですが
頭の中を空っぽにするという意味なのかなって思っていたら、
「頭の上の空間で、ものごとを考えるってこと」って岡さんに教えて頂きました。
勿論、いま住む土地「からつ」ともかけているそうですよ。
岡さんが有田の誰にも言わずに、突然唐津にアトリエを移したのは有田町では有名な話。
後編となる<唐津編>は、何故移った先は唐津だったのか。
そして唐津という土地がお二人の作品にどのように影響しているのかに迫ります。
禿げたから、夜逃げ
金子「唐津に移ってきたのは、17、8年前?ですよね。有田の人達には誰にも言わずに移ったとか」
さつきさん「商社から離れたかったんだよね」
晋吾さん「禿げたんだよ」
金子「ストレスで?」
晋吾さん「そうそう。毎日来るからさ」
金子「仕事の進捗を確認に?」
さつきさん「いやいや、ただ遊びに(笑)」
晋吾さん「興味があるからただ見に来るんだよ。そうなると仕事に集中できないでしょう。今まで自分のことしか考えずに仕事をしてきたからさ、ストレスになっちゃって」
さつきさん「50円が、100円くらいになり、、、」
晋吾さん「風呂であれ?髪が無い!って」
さつきさん「こんな強人なのに」
金子「それで唐津に窯を移したんですね」
さつきさん「この辺りは、一帯がみかん畑だったんですよ。それを一から整地したから大変だったー」
晋吾さん「この建物以外は、庭とか全部自分で作ったんだよ」
さつきさん「すごいでしょう(笑)。焼き物やめて庭師になろうかなって言ってたわよ」
金子「(笑)畑も耕していますしね」
晋吾さん「そうそう。今でも少しずつ窯も庭も手を入れているよ」
文化のある街に
金子「何故、唐津だったのですか?」
晋吾さん「先生に言われたんだよ」
さつきさん「そうそう。産地で仕事をしなさいって言われたから」
晋吾さん「あとは城下町でやりなさいって。文化がある所でないと自分がやっていることがわからなくなるからって」
さつきさん「産業ではなくてね」
晋吾さん「当時の有田は意味なく焼き物を作っていたからね。
“文化がある街にいれば、産業になる前の時代の焼き物と今の焼き物がこういう風に繋がっているってわかるから、そういう所に行った方がいいって” 先生に言われたんです。
じゃあ唐津に行こうって」
さつきさん「唐津で良かったよね。三河内とかも候補になったけど」
晋吾さん「唐津は空が明るいしね。俺は佐世保の出身だから海に広がる空しか見たことなくて。唐津も海の街だしね。気分が明るくなるよね」
金子「僕も唐津が大好きです。作品づくりへの影響も大きいですか?」
さつきさん「大きいよね?」
晋吾さん「うん。大きいね」
さつきさん「唐津は若い作り手の皆さんも、唐津焼っていう独特な焼き物に真摯に向き合っているのがすごいと思う」
晋吾さん「これ(お金)を気にしていないよね。本当に唐津焼が好きで作っているというのが伝わってくる」
さつきさん「気にしていないわけではないだろうけど、唐津焼を大事にしているのが伝わってくる。そういう人たちと会えるのがすごく楽しみだし、同じ空気感を感じるのよね」
晋吾さん「みんな、自分の信念をも持ってやっているしね」
さつきさん「こんなこと言っているけど、5年前に唐津に自宅を引っ越してからようやく唐津の人達とお付き合いすることになったんですよ。それまでは窯に通っていただけだったから」
晋吾さん「そろそろ、唐津やきもん祭りに参加したいなって思って。
勝手がわからないから一番館さん(唐津駅前にある老舗のギャラリーさん)に行って、やきもん祭りの集まりに連れて行ってもらったんだよ。
そうしたらみんなに “何で岡さんここにおると?” っていわれて。
いや出したいと思ったからって言ったら “もうださんでええやん?” って言われて(笑)」
金子「もう売れているんだからって?(笑)」
晋吾さん「(笑)せっかく引っ越してきたからね」
さつきさん「唐津に馴染めたらなあって思いがあったよね」
晋吾さん「その時に浜野ちゃん(浜野まゆみさん)と伊藤明美さんとさつきの3人でアーケードに出店したんだよね。俺は付録みたいな感じで出て(笑)」
さつきさん「そうそうそう。それから輪が広がって」
晋吾さん「繋がりができていったんだよね」
金子「唐津はそういったイベントを通じて、お客様と作り手の距離が近いのもいいですよね。雨晴でも “こないだ唐津に行ってきたんですよ!” って教えてくださるお客様がたくさんいらっしゃるので嬉しいです」
晋吾さん「唐津ってすごいよね。これだけ作家がいるのにみんな売れている」
金子「たしかに!」
さつきさん「昔は、唐津といえば中里家。その他はお土産という感じだったのにね。
私は中里隆先生の大ファンなんです」
金子「そうだったのですか!店舗にいると天平窯の作品は唐津焼なのですか?って聞かれるんですけど答えに困りますね(笑)」
さつきさん「そうよね。私たちも唐津焼って思って作っていないしね」