くらしをつくる人NOTE

Vol.14
2022.5.6
Vol.14 陶芸家 田中信彦さん <POP!!編>

第14回目は、埼玉県入間市で作陶に励む田中信彦さんです。

「世界ベストレストラン50」の2021年度版で見事5度目の首位を獲得した
デンマークのレストラン「noma」。

その姉妹店である「INUA」の食器を任されてから、代表作である「色のうつわ」が世界中のシェフの憧れの的となっている田中さん。

POPで美しい彩りが共通言語となり国境を越えて活躍されている田中さんですが
その作品が生まれる原動力は田中さんの心の奥底にあるPUNKな精神。

お酒を呑みながらそんなお話を何度か伺ったことがあったのですが
今回はあらためて田中さんがどのような想いで作品を生み出しているのか雨晴の金子が迫ります。

前編を<POP!!編>、後編を<PUNK!!!編>として二部構成でお届けいたします!!


イノシシとカモシカ

西武池袋線に乗り込み、1時間ほど揺られて辿り着いたのは埼玉県入間市にある仏子(ぶし)駅です。

少し肌寒く感じたので薄手のダウンを羽織り、
ふと空を見上げると満開のソメイヨシノがお出迎え。

白金台の桜は葉桜になっていた時季でしたので気候の違いを感じます。

飯能市に隣接する仏子は自然がとっても豊かな場所。

「音大が江古田にキャンパスの機能を移転したため生徒さんが通学しなくなって、イノシシやカモシカが出るようになったんです」と田中さんが教えてくださいました。

東京の中野で育った田中さんですが、ご縁あって今はこの場所で独立し作陶に励まれています。
田中さんが「俺公園」と呼んでいる(笑)
アトリエ近くにある加治丘陵の頂上でお弁当を食べながら、お話を伺いました。

反メインストリーム

金子「田中さんが、陶芸家になったきっかけを教えてください」

田中さん「やきものに初めて触れたのは大学のサークルでした。高校の時は落研に入っていたんですけどね(笑)」

金子「落研!お話がお上手なのも納得です!」

田中さん「今回の展覧会のテーマにもある“PUNK”って“反体制”とか“反メインストリーム”みたいな精神だと思うんですけど、自分は子供の頃から人と同じことをしたくないみたいな気持ちがすごく強かったんです」

金子「元々、そうだったんですか?」

田中さん「自分を分析すればそれは自信の無さの裏返しなんですけどね。
高校時代のメインストリームの人たちって、スポーツやって、遊んでという男たちじゃないですが。僕はそういうところに入れなかったし、苦手だったから。そういう環境の中で人とは違うことをしたいと思うようになって、落研に入ってみたりしたんですけどね。夢中になれるものが無いまま学生生活を過ごしていたんです」

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出会っちゃった