くらしをつくる人NOTE
2017.10.27
記念すべき第十回は、自然豊かな香川県高松で作陶に励む境道一さんです。
「焼き物との出会いは、一期一会」
そう話す境さんの作品は、偶然が重なって生まれた個性豊かなうつわばかり。
一点一点が異なる表情を持ち、選ぶ側を愉しませてくれます。
織部、灰釉、焼き締め、黒釉。
土や釉薬を厳選し、穴窯の中で焼かれた自然な表情のうつわが優しく料理を受け止めてくれます。
桜が咲く頃に
雨晴一行が四国に初上陸したのは、2017年4月中旬のこと。
香川県高松を訪れた時は桜が美しく咲いていましたが、朝晩は少し肌寒かったことを記憶しています。
その3週間ほど前に、陶芸家境道一さんから
「4月10日からの3日間が窯焚きの山場になりそうです。都合が合えばぜひ見にいらしてください」
との嬉しいお誘いをいただきました。
境さんはご実家のある長野県で作陶をされていたのですが、2015年に同じく陶芸家である奥様、知子さんのご実家のある高松に移り住み、一から薪の窯をご自身たちの手で制作。
ご連絡いただいたのは、焼き締めのうつわ用の穴窯と呼ばれる薪の窯で、初めてうつわを焼く「初窯」見学のご案内です。
金子「ぜひ伺いたいと思います!」
薪窯に火が入っているところを見ることができるのも貴重ですが、初窯をご一緒できるなんて一生に何度あるかわからない機会。
諸々の予定を調整して高松へと向かいました。
長野生まれ、備前育ち
長野県須坂市にある窯元の家に境さんは生まれました。
その後、岡山の高校の陶芸コースで陶芸を学ばれます。
最初から焼き物が好きだったかと言えば・・・。
金子「焼き物を作るようになったきっかけを教えてください」
境さん「親父が陶芸家なんです。でも自分はあまり陶芸が好きじゃなかったんです(笑)。
親父は元々サラリーマンだったのですが、体調を崩してしばらく仕事を休んでいました。
ある時、知人の窯で焼いた作品を日展に出したら通ってしまって。
全くの素人だったんですけど、それをきっかけに脱サラして陶芸家になったんです。
母親も相当苦労したと思いますよ」
金子「境さんは、なぜ焼き物を作ることになったのですか?」
境さん「元々ものを作るのが好きで、手段としてたまたま身近な陶芸を始めました。
なんでかなあ、親父がたまたまやっていたからですかね。
子供の頃は意識していなかったのですが、陶芸という仕事を好きではないと思いながらも父親が作る焼き物には興味があったのかもしれません。
焼き物を一生やっていく! という程の覚悟はなかったのですが、一度実家から離れたくて、岡山にある全寮制の高校に行って、陶芸コースを選択したんです。
父親には“陶芸をやるから行かせてくれって”嘘をついて(笑)」
金子「そこで備前焼と出会うわけですね」
境さん「備前焼の産地も近くて、学校の講師も備前の人。
備前焼が本当に身近にありましたし、かっこ良いなあと思っていました」