くらしをつくる人NOTE

Vol.8
2017.6.28
ガラス作家 おおやぶみよさん

第八回は、光と水。

生命にとって必要不可欠な二つをご自身の作品を通じて表現されている
ガラス作家おおやぶみよさんです。

とろりとした質感、ぽつりぽつりと入った気泡、包容力があり、ガラスなのにどこかあたたかい。
太陽の光が通り抜けると水面がゆらぐような影が麗しいうつわやオブジェ。
一点一点心を込めて作品を生み出していらっしゃいます。


青と白

沖縄は、まだまだ暑い夏の気候が続いていた2016年秋。

雨晴一行は、沖縄県某所にあるおおやぶさんの新しい工房兼新居にお邪魔してきました。

「大通りからだいぶ奥まった場所にあるからわかりにくいかも」
とおおやぶさんから事前に伺っていたため、少々不安に思いながら向かっていた道中。

遠くの方に、明らかに周りの雰囲気とは異なるモダンな建物が見えてきました。

沖縄の青空に映える真っ白な建物。そこがみよさんの新しいくらしの場所。

みよさんといえば、読谷村(よみたんそん)にあるギャラリー「日月-hizuki-」の印象が強く、あの世界観に魅了されたファンの方も数多くいらっしゃると思います。

実は私もその一人。

10年以上も前のことですが、初めて日月に伺った時にみよさんがお子さんを抱っこしながら接客してくださったことをいまでも覚えています。
あの空間で見る太陽の光をいっぱい浴びて輝く、作品にとても感動しました。

10年後のいま、目の前にはあのノスタルジックな雰囲気の日月とは対照的なモダンな空間があります。

この家を見て、とてもわくわくしました。
そしてみよさんの中で、何か心境の変化があるのかなとも思いました。

おおやぶさんの中で変わろうとしていること。
そして変わらないこと。

雨晴金子が伺います。

雪駄、下駄、鉢巻き、前掛け

みよさんには、似つかわしくない見出しですが(笑)。

みよさんは、元々ものを作られるのが好きで、服飾の学校を卒業されました。
「何ででしょうね?」とご自身も笑いながらお話しされるように、卒業後、布からガラスに興味が移り、石川県の能登島のガラス学校で一年間勉強。

その後、大阪にあるガラス会社で職人として働かれていました。

他の職人さんたちの制服は「雪駄、下駄、鉢巻き、前掛け」だったそうで。

仕事帰りには銭湯に寄り、職人のおじさんたちと一緒に立ち飲み屋で一杯ひっかけてから帰るという日々を送っていたそうです。

いまの姿からは全く想像できませんが、職人気質なところも併せ持つみよさんらしいエピソードです。

金子「大阪の会社では、何を作られていたのですか?」

おおやぶさん「フラワーベースならフラワーベース、グラスならグラス、照明なら照明といったようにチームごとにひたすら同じものを作っていました。同じものばかり作っているからみんなすごい技術が高かった」

金子「ご苦労されたこともあったのではないですか?」

おおやぶさん「私は左利きなんですけどね、学校では自由にやらせてもらっていたんですが、
その会社では一人が違う動きをするとみんなが怪我をするからと右に直されたんですよ。
めちゃめちゃ大変だった。でも、いまとなってはボケ防止になって良いかもと思っていますけど(笑)」

金子「(笑)。その後、会社を辞めてから沖縄に行かれたのですか?」

おおやぶさん「当時、ガラス製品は中国産の勢いがすごくて、会社が倒産しちゃったんです。
ちょうど、いろいろな地域のガラスを見たいなと思っていた頃だったんですけど、宮古島に織りの仕事をするために移住した友人がいたので、じゃあ南から行くか! という感じで、まずは沖縄に行くことにしました(笑)」

     
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ガラスの質感