くらしをつくる人NOTE

Vol.1
2016.03.01
景色盆栽作家 小林健二さん

記念すべき第一回は、日々のくらしの中での自然との関わり方を教えてくださる
「景色盆栽」の生みの親、品品主宰小林健二さんです。

景色盆栽とは、自然の景色を切り取り、室内で四季のうつろいを愛でるという、新しいスタイルの盆栽です。


家庭は“家”と“庭”でできている

雨晴「いまでは、盆栽を室内に飾るということは珍しくなくなりましたが、開業された当時は一般の方にとって“盆栽”は特別なものだったと思います。何故、小林さんは盆栽作家になろうと考えられたのですか?」

小林さん「元々実家が工務店をやっていまして、家を造るという仕事を子供の頃から見ていました。僕には兄がいるのですが、父親の口癖は“家庭という字は家と庭からできているだろう。良い家と庭があって、はじめて良い家庭になるんだ。”兄には家を、僕には庭を造らせたかったみたいです」

雨晴「“家”と“庭”で家庭。素敵なお父様ですね」

小林さん「その頃からなんとなく庭に興味を持ち始めて、造園を学ぶために学校に入りました。その後、設計事務所に入社するんですが庭を極めるなら盆栽を学んだ方が良いとアドバイスを受けて、紹介してもらったアメリカの盆栽の先生のところに2年間修行に行くことになりました」

雨晴「盆栽なのにアメリカですか?」

小林さん「はい、1年半オレゴンに、残りの半年はカナダに行きました。その先生の盆栽というのがとても面白くて、すっかりのめり込んで朝から晩まで盆栽を創っていました」

雨晴「普通の盆栽と何が違うのですか?」

小林さん「一言でいうと自分が見たことのある自然の景色を切り取って表現しているんです。子供の頃見た長野の山の中の景色や、アメリカやカナダで見た大自然をイメージしながら景色を創る。その手法を学びました」

雨晴「小林さんの景色盆栽を見ていると自分が山の中に迷い込んだような、木陰から野生の動物がひょっこり出てきそうな、そんな錯覚に陥ります。家の中に置くと、そこに本物の自然があるように感じます」

小林さん「僕が提案したいのは盆栽を育てることだけではなく、景色盆栽がある空間の心地よさや、植物が家の中にあることで会話が生まれるくらしです」

雨晴「なるほど。マンションなど、お庭を持てないおうちには“家”はあるけど“庭”はない。現代の家庭の“庭”の役目を果たしてくれるのが景色盆栽なのですね」

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植物には優しい心で触れる