くらしをつくる人NOTE

Vol.7
2017.5.30
木工作家 藤本健さん

自然の力を借りる

藤本さんの作品の最大の特徴といえば、木そのものの表情を生かしてものづくりをしていることです。

一点一点異なる形、色、大きさ。
時に節があったり、時に割れがあったり、そして穴が開いていたり・・・。

機能を追求する商品であれば、不良とみなされてしまうような木の癖を上手に生かして作品として仕上げています。

金子「健さんの作品の魅力は、一点一点がそれぞれ個性を持っていることだと思います」

藤本さん「自分が目指しているのは、素材そのものの表情を生かした作品です。
原料となる木は造園業を営んでいる方から譲っていただくことが多いのですが、製材する前の丸太の状態でもらってくることがほとんどです。
自分の作品は汁物をいれようとすると、肝心なところに穴が開いていたり、
割れがあったりするものが多いんです(笑)。
でもそれが作品のよりどころになって、魅力が増すのだと思うんです」

                       

金子「確かに、より個性が強いものに不思議と魅かれてしまいますね。作品は生木の状態から削り出して作っているんですよね?」

藤本さん「アメリカやヨーロッパではよくある作り方なんですけど、日本では木工というときちんと木を乾燥させてから作ります。
こういう作品になるというのが最初からある程度決まっているから、仕上がった時に狂いが出ないように乾燥させた落ち着いた木を使うんです。
自分は少し違っていて、自分がこういうものを作りたいというよりは
その木の特性を生かすなら、どんな形やどんな大きさのものを作ると良いかを考えます。
最終的に、当初考えていたものと異なる作品に仕上がることもあるんです。 木に導かれている感覚です。
“自然の力を借りている”って自分は考えているのですが、生木は乾燥すると反ったりゆがんだりするので完成形はある程度予測はしていますが、仕上がりは木に委ねているのですよ」

藤本さんの作品からは、どこか自由というかゆとりのようなものが滲み出ています。

それは藤本さんが木とちょうど良い距離感で接し、会話をしながらものづくりをされているからなのではないかと感じました。

結果、木にとっても人にとっても自然で心地のよいフォルムの作品が生み出されているのだと思います。

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人と人をつなぐもの